2008年 夏期公演
―登場人物―
☆ゆい
主人公その1.。まだ小さいけど、優しくて行動力のある女の子。
小学校低学年くらい…?ゲームの中では、星を操る「魔法使い」に。
☆はやと
主人公その2。ゆいの兄でゲーム大好き。
小学校中学年くらい?(ゆいとそんなに歳離れてない)
ゲームの中では「剣士」に。
☆ルウ
真の主人公(かもしれない)ゲームの中のモンスター。
(モンスター=人型の人形+派手な色の髪+獣耳とかツノとかしっぽとか羽とか…)
魔王の親友で、とにかく泣き虫だけど優しい男の子。
☆魔王(ジーク)
影の主人公(…かもしれない)ゲームの中の「魔王」。
モンスターだけの世界を作ろうとしている、モンスターの王様。
最近様子がおかしい…らしい。
☆カノン
ゲーム中のモンスターで、魔王の手下。小悪魔的な感じ?の女の子。
背中の羽で空を飛ぶことができて、武器のヤリを手に持っている。
男の子キャラへの変更可。
☆リタ
同じく魔王の手下のモンスター。人型じゃない。
小さくて空を飛べるので、偵察やイタズラが大得意。
生意気というか元気いっぱいな男の子。
★小道具
ゆいの杖・はやとの剣・ゲーム機(コントローラーだけでいいかな?)
テレビ(兼タイトル&エンドボード)・縄(『ふしぎなハーモニカ』の)
オリ・魔王の剣・ゆいが魔法で操る星のようなもの
<第一場>
(舞台中央に剣が刺さっている。魔王出てくる)
魔王 :やっと見つけた!…これが、持ち主のどんな願いも叶える「伝説の剣」か…。ルウ、こっちだ!
ルウ :(走って出てくる)
はあ、やっと追いついたぁ…。 …あ!もしかしてあれが、願いを叶えてくれる剣!?
魔王 :ああ、そうだ。この剣さえあれば…!
(剣に近づいて引き抜こうとする)
な、なんだ!?……うわあぁあ!!
(メイン照明とかを使ってなにか演出。剣が地面から抜ける)
ルウ :ど、どうしたのジーク!?大丈夫!?
魔王 :……ああ。もう大丈夫だ。この剣さえあれば…俺は誰にも負けない!ハハハハ!
(ルウをほっぽって一人はける)
ルウ :じ、ジーク!?待ってよぉ!
(追いかける)
<第二場>
(はやと、テレビゲームで遊んでいる)
はやと:あーあ、またゲームオーバーになっちゃった。
(ゲームのコントローラーを投げ出す)
このゲーム、モンスターが強くって全然先に進めないや。
ゆい :(出てくる)
お兄ちゃーん、もうすぐ夜ご飯の時間だよー!…あ!それこの前買ってもらったゲーム?どんなお話のゲームなの?
はやと:ええと…このゲームの中の世界には「魔王」っていう悪いヤツがいるんだけど、
そいつが「願いを叶える剣」を使って世界をこわ~いモンスターだらけにしようとするんだ。
…で、その魔王とモンスターたちを、主人公の「剣士」と「魔法使い」が倒しに行く、っていうお話。
ゆい :へえ~。…ねえねえ、後であたしにもやらせて!
はやと:だーめ、これは僕が買ってもらったんだから、僕が先にクリアするんだ!
ゆい :えぇー?…もー、お兄ちゃんのいじわる!…あれ?
(きょろきょろ)
ルウ(声):…うっ、うぅ…うわぁぁん!!
ゆい :…今、誰かの泣き声が聞こえたよ?
はやと:え?…別に何も聞こえないけどなあ。
ゆい :ううん、こっちの…テレビの方から聞こえる!
(テレビに近づく)
…えっ?(テレビに吸い込まれる=下にはける)
きゃあああ!
はやと:ゆ、ゆい!?(ゆいと同じ)
うわあぁあ!!
《タイトルボード》
<第三場>
ルウ :(声)わあああ!
カノン:(声)こら、待てー!待ちなさいってば!!
(ルウ・カノンの順で飛び出してくる)
ルウ :はあ、はぁ…ダメだ、もう走れないよ~…
カノン:やっと追いついたわ、もう逃げられないわよ!
モンスターのくせに魔王さまの悪口言うなんて…絶対許さないんだから!
ルウ :わ、悪口なんか言ってないよ!僕はただ、魔王さまのことが心配で…
カノン:ふん、だーれがあんたの言うことなんて聞くもんですか!
魔王さまの所へ連れ戻す前に、あたしが今ここでおしおきしてあげる!
(ヤリを構える)
ルウ :や、やめてよカノン!うわああ!(後ずさり)
ゆい :…きゃあ!
(ゆい・はやと、カノンとルウの間の位置に下から飛び出してくる)
はやと:いたたたた…。…あれ?ここ、どこだ?
カノン:な、何よあんたたち!どこから出てきたの!?
はやと:うわあ!(カノンとルウを見る)げ、ゲームに出てきたモンスターがいる!?
…ま、まさか、ここって……ゲームの中の世界なんじゃ…!?
カノン:…何だか知らないけど、あんたたち人間ね?ちょうどいいわ、みーんなまとめて痛い目にあわせてあげる!
(一番近くのゆいを攻撃しようとする)
ルウ :あ、危ない!逃げて!!
(おっきな星が出てきて、カノンの攻撃をはじく)
カノン:な、何よこれぇ!?もしかして…魔法!?
ゆい :えーと、えーと……とんでっちゃえーー!
(もう一個星が出てきてカノンを攻撃。カノン地面に落ちる)
カノン:きゃああ!!ま、まさか魔法使いだったなんて…。お、覚えてなさいよーーっ!!
(カノン退場)
ルウ :…はあ~、た、助かったぁ…。二人とも、助けてくれてありがとう!
ボクはルウっていうんだけど、君たちの名前は?
はやと:僕ははやと。
ゆい :あたしはゆいっていうの。よろしくね!
ルウ :はやととゆい、だね。よろしく!ゆいは魔法使いなんだね。
はやとは剣を背負ってるけど、剣士なの?二人ともまだ小さいのにすごいねえ。
はやと:剣?…あれ、ホントだ!いつのまに…。
ゆい :あたしも、さっき気がついたらこの杖を手に持ってたの。魔法が使えたのもそのおかげなのかな?
はやと:剣と魔法の杖、かあ。やっぱり、ここはゲームの世界なんだね。
ルウ :…えっと…どういうこと?
ゆい :ここは、あたしとお兄ちゃんが住んでる世界とは全然違う所みたいなの。
…そういえばあたしたち、どうやったら元の世界に帰れるのかな?
ルウ :うーん…違う世界」かあ…。難しくてボクにはよく分からないけど、魔王さまなら何か知ってるかもしれない。
…でも、ボク…きっともう魔王さまの所には帰れないよ…。う、うわあああん!
はやと:だ、大丈夫?
ゆい :そういえば、さっきも仲間のモンスターにいじめられてたみたいだけど…
ルウちゃん、もしよかったら、何があったのかあたしたちにも聞かせて?
ルウ :…う、うん…。ありがとう二人とも。ここにいると、また他のモンスターに見つかっちゃうかもしれない。
ひとまずどこかに隠れよう!
(ルウを先頭にはける)
(三人が去ったのと反対方向から、リタ飛んで登場)
リタ:見ぃーちゃった、見ーちゃった♪
…ルウのヤツ、魔王さまの所から逃げ出しただけじゃなく人間と仲良くなるだなんて…なーに考えてんだか。
ま、ともかく早く魔王さまに報告しなきゃなーっ!!
(リタ、ぴゅーっと飛んではける)
<第四場>
魔王 :ずいぶんと遅かったな、カノン。あの裏切り者のルウはどうした?
カノン:それが…捕まえようとしたところを、人間に邪魔されてしまいまして…。
魔王 :人間だと?いったいどんな奴らだ?
カノン:魔法使いと、剣を持った人間でした。
魔王 :…ふん、どうせまた人間どもが俺を倒しにやって来たんだろう。
(剣を出す)
この「願いを叶える剣」がある限り、俺が負けるわけがないのにな。
リタ :魔王さまーーっ!!(飛んで登場、あたりを飛び回る)大変ですーー!
魔王:…いったいどうした?騒がしいぞ、リタ。
リタ :す、すんません!…ルウのヤツ、その剣士と魔法使いと一緒にどっかへ行きましたぜ!
…もしかしてアイツ、この城への道を人間どもに教えてやるつもりなのかも…。
魔王 :…ふん、ちょうど退屈していたところだ。カノン、リタ。ルウとその人間二人を俺のところに連れてこい。
久しぶりにこの剣の力を試してやる!
カノン:はっ、はい!!
リタ :魔王さま、カノンなんていなくても、このオレ様一人で十分ですぜ!
カノン:な、なぁんですってぇ!?…あんたこそ、あたしの獲物を横取りしないでよね!
リタ :はん、さっきはまんまとやられてたくせに!
魔王 :…お前たち、いい加減にしろ!言っておくが、二度目の失敗は許さんぞ!さっさと行けっ!!
カノン・リタ:はっ、はい~!!
(カノン・リタはける)
魔王 :…ふん、人間がモンスターを助ける、だと?そんな人間がまだいたとはな。…馬鹿な奴らだ。
<第五場>
(ルウ、はやと、ゆいの順で出てくる)
ルウ:ふう、ここまで来ればもう大丈夫かな?
はやと:…ねえ、ルウ。ルウはさっき「魔王さま」って言ってたよね?
ルウは魔王に会ったことある?やっぱり、すごーく強くて恐いんでしょ?
ルウ :うん、もちろん会ったことはあるよ。ボクたちモンスターは魔王さまのお城に住んでるからね。
でも、魔王さまは恐くなんかないよ。すごく優しくて、人間なのにモンスターをとっても大事にしてくれるんだ。
はやと:…えぇ!?「人間なのに」って…魔王はモンスターだらけの世界を作ろうとしてるんでしょ?
魔王もモンスターなんじゃないの?
ルウ :ううん、魔王さまはキミたちと同じ人間だよ。「ジーク」っていう名前なんだ。
昔、ボクが人間にいじめられてる所を助けてくれて、それからずっと仲良しの友達なんだ。
ゆい:…でも、さっきルウちゃんは「もう魔王さまの所には帰れない」って言ってたよね。どういうこと?
ルウ :…それが、少し前に「願いを叶える剣」を手に入れてから、魔王さまの様子がおかしくて…。
全然笑わなくなって、「人間のいないモンスターだけの世界を作る」なんて言いだすようになったんだ。
…ボクが「ジーク」って名前で呼んだだけでも怒るし。
…だからボク、「昔の魔王さまに戻ってください」って言ったんだけど、魔王さまもモンスターのみんなも、
ちゃんと聞いてくれなくて…。う、うわああああん!!
ゆい :ルウちゃん…。 ねえルウちゃん、もう一度魔王さまとお話ししにいこうよ。 あたしも一緒についていくから!
はやと:えぇ!?ま、魔王と話すって…。魔王はモンスターの王様なんだよ!?僕たちじゃかなうわけないよ!
ゆい :戦うんじゃなくてお話しにいくんだもん。大丈夫だよ!もし何かあっても、今なら魔法が使えるみたいだし。
それに、あたしたちがおうちに帰る方法も分かるかもしれないよ?
はやと:…うーん、まあ確かに、ここにいても家に帰れるわけじゃないしなあ…。
…わかった、僕も行くよ。ルウってばモンスターなのに泣き虫で、なんだかほっとけないんだもん。
ルウ:ゆい、はやと…。ほ、ほんとにいいの?
ゆい:うん、三人で行けばきっと上手くいくよ!
そうと決まれば、早く出発しよう?…ルウちゃん、魔王さまのお城まで案内してくれる?
ルウ:うん、もちろんだよ。二人とも、ほんとにありがとう! …それじゃあ、ボクについてきて!
<第六場>
(ルウ・はやと・ゆいの順で歩く。ゆいだけ少し歩くのが遅い。
リタがそーっと後をつけているが、みんな進行方向を見ているので気づかない)
はやと:ゆい、大丈夫?
(はやと、ルウ振り向く→リタいったん引っ込む)
ルウ :この辺の道は、石がゴロゴロ転がってて歩きにくいんだ。転ばないように気をつけて!
(また歩き出す→リタまた出てくる)
リタ :そーれっ!!(ゆいを後ろから突き飛ばす)
ゆい :きゃあ!(転んで杖を落とす)
リタ :もーらいっと!(杖を拾って飛ぶ)
へへん、杖がなければ魔法使いなんてこわくないぜ!(入ってきたのと反対側にはける)
はやと:も、モンスター!?…ルウ大変、早く取り返さないと!(追いかけようとする)
ルウ :はやと、待って!ボクが追いかける!はやとはゆいについててあげて!
(ルウはける)
はやと:う、うん!…ゆい、大丈夫!?(ゆいに近づく)
(オリみたいなのがいきなり下からせり上がってきて、二人捕まる。カノン登場)
カノン:あはははは、ひっかかった~♪
ゆい :あ!あなた…さっきルウちゃんをいじめてたモンスターね!?
はやと:くっそー、このオリ、剣じゃ斬れないよ!
(リタとルウ、はけた側から飛び出してくる)
リタ :どーやらオレの計算通りにいったみたいだな!
カノン:なに言ってんのよ、一匹逃がしちゃったじゃないの!
ルウ:ゆい、はやと!!…カノン、二人を放してよ!
カノン:…ふん、あんたなんてまたいつでも捕まえられるわ。
また来てあげるから、そこでおとなしく待ってなさい!じゃあね~♪
(カノン、ゆい・はやとの入ったオリ、舞台下へ消える)
ルウ :ま、待って!! …どうしよう。ボクが巻き込んだせいで、二人が捕まっちゃった…
リタ :悔しかったら、魔王さまの所まで二人を助けにくるんだな。
…ま、泣き虫ルウが一人でそんなことできるわけないか!じゃあな~♪
(リタはける)
ルウ :どうしよう!…ボクが、ボクがなんとかしなくちゃ…!
<第七場>
(ゆい・はやと、縄でぐるぐる巻き)
ゆい :お兄ちゃん、この縄ほどけないよう。
はやと:僕の剣も取り上げられちゃったし…どうしよう。あ、誰か来るよ!
(魔王登場)
魔王 :…お前たちが、カノンの言っていた剣士と魔法使いか?
俺が魔王と呼ばれるようになってから、ずいぶん多くの人間が俺を倒しに来たが…
ハハハ、まさかこんな子どもがやってくるとはな!
はやと:僕たちは、魔王を倒しに来たんじゃないよ!
魔王 :…なんだと?
ゆい :ルウちゃんが言ってたの。魔王さまは、人間なのにモンスターを大事にしてくれる、すごく優しい人だって。
…なのに、どうして人間とモンスター、みんなで仲良くしようとしないの?
魔王 :…ふん、黙れ!お前らにいったい何が分かる?…みんなで仲良く、か。確かに、最初は俺もそう思ってたさ。
はやと:じゃあどうして!?
魔王 :何をやったって、人間はモンスターを怖がる。
そして最後には、モンスターを守ろうとする人間の俺のことまで怖がるようになるんだ。
最初に俺を「魔王」だなんて呼び始めたのも人間どもだしな。
…そんな奴らばかりなら、俺以外の人間なんていなくなってしまえばいい!
はやと:そんな…
魔王 :おしゃべりはもう終わりだ。…お前たちにも、この剣の力を見せてやろう!
(剣を構えてゆいとはやとににじり寄る)
ルウ :待ってください、魔王さま!!(飛び出してくる)
ゆい :ルウちゃん!
ルウ :遅くなってごめんね、二人とも!剣と杖も取り返してきたよ。すぐ縄をほどくから、待っててね!
はやと:ルウ、ありがとう!
魔王 :ルウ…お前はどこまで俺の邪魔をする気だ!そこをどけ!!
ルウ :魔王さま…ううん、もうやめてよ、ジーク!ゆいとはやとは、いじめられてるボクを助けてくれたんだ!
昔ボクを助けてくれたジークが、その二人を攻撃するなんて…ボク、見たくないよ!!…うっ、うわああああん!!
(しばらく間)
魔王 :…まったく…いつまでたっても泣き虫なんだな、お前は。
…分かった、話を聞いてやる!聞いてやるから、もう泣くのをやめろ!
(剣をしまう)
ルウ :…ほ、ほんと?
魔王 :ああ。そこの二人も、縄をほどいてやれ。
ルウ :う、うん!(縄をほどく)
ゆい、はやと、ケガはない?
ゆい :うん、大丈夫!話を聞いてもらえることになってよかったねぇ、ルウちゃん。魔王さまも、ありがとう!
魔王 :…ふん。言いたいことがあるのなら、さっさと話すんだな。
(魔王、ルウたちに近づく→割り込むように魔王の剣が下から現れる)
魔王 :な、何だ?
(剣、勝手に飛び回る→魔王の頭上に浮かぶ)
はやと:け、剣が勝手に動いてる!?…なんだか…様子がおかしいよ!
(剣、裏表ひっくりかえって色が変わる。赤とかまがまがしい色)
魔王 :う…うわあぁああ!!(体が宙に浮かぶ)
ルウ :じ、ジーク!?
魔王 :(宙に浮かんだまま、剣を手にする)
……あぁ、そうだ。俺の願いは、モンスターだけの世界を作ることだったな。
…それを邪魔するやつは…みんな、みんな消えてしまえ!!
(斬りかかってくる)
はやと:危ない!!(自分の剣で魔王の剣を防ぐ)
ゆい :お兄ちゃん!!…ど、どうなってるの!?
ルウ :あの「願いを叶える剣」の力が強すぎて…ジークは、心をのっとられてるんだ!!
最近様子がおかしかったのも、きっとあの剣のせいだよ!
はやと:うわっ!(魔王にはじかれる)
こ、このままじゃ負けちゃうよ!…ルウ、どうすればいいの!?
ルウ :何とか、あの剣だけを壊せればいいんだけど…
ゆい :あたしもやってみる!…えーいっ!!(杖を振り上げる)
(星、魔王めがけて飛んでくる→剣ではじかれる)
ゆい :ダメ、魔法も効かないよー!
魔王 :…どうした、もう終わりか!?
はやと:うわっ!!(斬りかかってきた魔王にはじき飛ばされる)
ルウ :(はやととゆいをかばって魔王に近づく)ジーク!目を覚まして!!
魔王 :…たとえモンスターだろうと、俺の邪魔をする奴は許さん。
どけっ!!(剣をルウにつきつける)
ゆい :ルウちゃん!!
(杖を振り上げる)…お願い!みんなを助けて!!
(星がはやとの剣に向かって飛んでいく→はやとの剣、裏表ひっくりかえって色が変わる。青色とか…?)
はやと:け、剣の色が…変わった!?
魔王 :何をごちゃごちゃやっている?…いまさら、何をやっても無駄だ!!
(再びはやとに切りかかる)
はやと:えいっ!!
(はやと、魔王の剣を防ぐ。だんだん押し返すような感じで)
魔王:な、何だと…!?
はやと:…僕も、ゆいも、「魔王」を倒しに来たわけじゃないんだ! …ジーク!元に戻って!!
(剣を押し返す)
魔王:馬鹿な、この俺が…「願いを叶える剣」が、負けるはずが…!…う、うわあぁあ!!
(剣、元の色に戻って地面に落ちる。魔王も落ちてきて倒れる。)
ルウ :(魔王にかけよる)ジーク、ジーク!しっかりして!
<第八場>
はやと:ルウ、魔王の様子はどう?
ルウ :もう大丈夫。あと少ししたら目を覚ますと思うよ。…はやと、ゆい、本当にありがとう!
二人がいなかったら、ボクはきっとジークの所に帰れなかったし…ジークも剣に操られたままだったと思うんだ。
ゆい :ううん!ルウちゃんが一生懸命だったから、魔王さまを助けることができたんだよ!
……あれ?ねえお兄ちゃん、そういえばあたしたち…結局、どうやって元の世界に帰ればいいのかな?
はやと:そうだ、すっかり忘れてた!…どうしよう?
魔王(声):なら、これを使うといい。(魔王出てくる)
ルウ :あ、ジーク!もう平気なの?…それ…さっき壊した、願いを叶える剣?
魔王 :ああ。…どんな願いでも叶えるほどの力はもうなくなったが、お前たち二人を元の世界に帰すくらいの力なら、
まだ残っているはずだ。
はやと:でも、これはもともと魔王…ジークが手に入れたものなんでしょ?僕たちがもらっていいの?
魔王 :…ああ、もう俺には必要ない。剣に頼って操られるようじゃ、俺もまだまだ力が足りないようだからな。
強くなるために、また旅にでも出るさ。
…それに、世界を回れば、お前たちのような人間や、モンスターと人間が一緒に暮らす方法も、
どこかで見つかるかもしれないからな。
はやと:ジークはすごく強いもん、きっと見つけられるよ!
…あっ!そうだ、いいこと思いついた!…ゆい、ちょっと持ってて!
(魔王からもらった剣をゆいに渡して、自分の剣を出す)
ねえジーク、「願いを叶える剣」のお礼に、僕の剣を持っていってよ!
魔王 :…な、なに?…お前は「剣士」だろう。お前こそ、剣が必要なんじゃないのか?
はやと:ううん、僕とゆいは、これから家に帰るから…もう必要ないんだ。ね、ゆい?
ゆい :うん!…それに、ジークはこれから旅に出るんでしょ?剣があれば絶対役に立つと思うの。ねっ!
(はやと、剣をちょっと強引に魔王に渡す)
魔王 :…俺はべつに、礼が欲しいわけじゃない。…だが、その…
はやと:え?
魔王 :その、なんだ…つまり、
ルウ :つまり、本当は二人に「ありがとう」って言いたいんでしょ?
…まったく、いつまでたっても意地っ張りなんだなあ、ジークは。
魔王 :…う、うるさい!お前だって、いつまでたっても泣いてばかりだろうが!!
(剣をしまう)
…はやと、おまえの剣はありがたく使わせてもらう。お前たちも、気をつけて帰ることだ。
はやと:うん、ありがとう!…ジークも気をつけてね!
魔王 :ああ。(はやととゆいの後ろを通ってルウの方へ移動)
ルウ、出発するぞ。
ルウ :…えっ!?も、もしかして、…ボクもまた一緒に行っていいの…?
魔王 :当たり前だろう。…なんだ?まさか、お前はついてこないつもりだったのか?
ルウ :……うっ…うわああぁん!!(また泣いちゃったよ)ジーク、ありがとう~~!
ジーク:…だっ、だから泣くなと言ってるだろうが!!さっさと行くぞ!
(ジーク先にはける)
ゆい :よかったねえ、ルウちゃん!
ルウ :うん!!…ボク、今はこんなに泣き虫だけど…
二人がボクたちのことを助けてくれたみたいに、ボクも誰かを助けられるくらい、強くなれたらいいな!
ゆい :優しいルウちゃんなら、大丈夫。
きっとこれから、たくさんの人やモンスターを助けてあげられるよ!…がんばって ね、ルウちゃん!!
ルウ :ありがとう! じゃあ、ゆい、はやと…元気でね!
(ルウはける)
ゆい :怖いこともあったけど、とっても楽しかったね!お兄ちゃん。
はやと:うん!…僕、ルウとジークに会えてよかった。またどこかで、二人に会えるといいなあ。
……それじゃあゆい、そろそろおうちに帰ろうか。
ゆい :そうだね!…あたしとお兄ちゃんがいきなり部屋からいなくなっちゃって、お母さん心配してるかもしれないし…。
はやと:…うわあ、また怒られそうだなあ…。それじゃあ、早く帰ろう!
(二人で剣をかかげる)
ゆい :…お願い!あたしとお兄ちゃんを、おうちに帰して!!
<第九場>
はやと:う、うーん…。(あたりを見回す)ゆい、起きて!ゆい!
ゆい :うぅん…あ、お兄ちゃん!(見回す)
あたしたち、おうちに帰ってこられたんだね!
ゆいとはやとの母(声のみ):ゆいー、はやと、なにやってるのー!?
早く来ないと、先にご飯食べちゃうわよー!
ゆい :は、はーいっ!!
…そういえばあたし、お兄ちゃんを呼びにきたところでゲームに吸い込まれたんだっけ。
はやと:ゲームの中では、あんなに色々あったのに…こっちじゃぜんぜん時間が経ってないみたいだ。
時計の針も進んでないし、テレビもゲーム画面のままだし…。
…あれ?(テレビに近づく)
ゆい :お兄ちゃん、どうしたの?(近づく)
はやと:ゲームの画面が、さっきと変わってる!何か書いてあるや。なになに…
「このゲームは、人間とモンスターがなかよく暮らす世界を作るために
主人公の『ジーク』と『ルウ』が世界を旅するゲームです。」
はやと:これ…ゲームの中身が変わってる!このゲーム、ジークとルウがお話の主人公なんだ!
ゆい :えっ、ホント!?…ねえねえお兄ちゃん、後であたしにもぜーったいやらせてね!
はやと:うん、もちろん!!…またルウとジークに会えるの、楽しみだな!早くごはん食べにいこ、ゆい!
(はやとを先頭にはける)
《エンドボード》
脚本・監督・著作 E.W