2013年 夏期公演
【登場人物】
エイト:小学生の男の子。マルコちゃんに恋しているが、素直になれないツンデレ。
マルコ:小学生の女の子。高飛車なお嬢様。得意技はノーザンライトボム。
お母さん:エイトの母親。
パスタ:こざかしいリス。野生だったが罠にかかり捕獲され、エイトのペットになった。
ニャンスケ:黒猫の若者。イヌエモンという家老を率いて山を闊歩している。
イヌエモン:ニャンスケのお供をしている老犬。得意技はダンス。
ウサコ:元気なウサギの女の子。ニャンスケの友達。
クマ:山に住む灰色のクマ。礼儀やマナーにうるさい中年。
●シーン1(エイトの家)
エイト寝転がっている
エイト:ふわああああ。(あくびをしている)
パスタ:こらー、エイトさん!せっかくの夏休みなのに、毎日毎日ごろごろしていたら、時間がもったいないじゃないですか。
エイト:なんだパスタかー。気持ちよくお昼寝していたのにー。
お母さん:お昼寝なんて、いつだってできるでしょう?今しかできないことをしないと駄目よ。
エイト:だって、外は暑いし、疲れちゃうよ。
お母さん:あなたの大好きなマルコちゃんを見てみなさい。今日は山登りに行くらしいわよ。
今日こそ、マルコちゃんにプロポーズしてきたら?
エイト:マルコちゃんと山登りかぁ、楽しそうだなあ。
お母さん:そうだわ、エイト。山の頂上には、赤いお花が咲いているから、マルコちゃんと一緒に見てきたらどうかしら?
エイト: よーし、マルコちゃんにプロポーズするチャンスだ。行ってきまーす。
エイト走って出て行く
お母さん:ふふふ、あの子ったら、本当にマルコちゃんのことが大好きなのね。 でもちょっと心配ねえ。
パスタ:お母様。エイトさんのプロポーズが上手くいくかどうか、私達もこっそり付いて行って、確かめましょうよ。
お母さん:そうね。こっそり付いて行きましょう。
パスタとお母さん出て行く
タイトルボード
●シーン2(山のふもと)
エイト:よーし、山のふもとに着いたぞ。マルコちゃんは、まだ来ていないのかな?
マルコが走って出て来る
マルコ:あら?エイト君じゃありませんの。
エイト:あっ、マルコちゃん!何の用かな。僕は今、忙しいんだけど。(動揺している)
マルコ:あら、本当に?エイト君は、一年中、家の中でお昼寝しているものだとばかり思っていたけど。
エイト:マルコちゃんは本当に失礼なやつだね。僕は今から、この山の頂上まで赤いお花を見に行くところなんだ。
マルコちゃんこそ、今日はどうしたの?
マルコ:ちょうど私もこの山の頂上まで、赤いお花を見に行くところでしたの。
そうだわ。普通に山を登っても、面白くありませんから、エイト君、どちらが先に頂上まで行けるか勝負しません?
エイト:ええーっ。嫌だよお、一緒に、ゆっくりと山を登ったらいいじゃないか。
マルコ:あらあら、やっぱり負けるのが怖いんでしょう。私と違って、エイト君は運動神経が鈍いですものねぇ。
それならこうしましょう。勝負に勝った方が、ひとつだけお願いを聞いてもらえるというのはどうかしら?
エイト:なるほど、面白そうだね。よーし、分かったよ。その勝負、受けて立つよ!
マルコ:ふふふ、そうこなくっちゃ。
私はエイト君とは違って、運動神経も抜群ですし、頭の回転も速いですから、こんな山、ちょちょいのちょいですわ。
それではごきげんよう、のろまなエイト君、私は先に行きますわね。ふふふふふ。
マルコ走って出て行く
エイト:相変わらずだなあ。よーし、マルコちゃんよりも絶対に速く、頂上に行ってやる!
これはマルコちゃんと結婚してもらう絶好のチャンスだぞ!
エイトも走って出て行く
お母さんとパスタが出て来る
パスタ:マルコちゃんって、あんなに口の悪い女の子だったんですね。エイトさんはあんなことを言われても、
マルコちゃんのことが好きなんでしょうか?ぼくだったら我慢できませんよ。
お母さん:ふふふ。嫌なところも全部含めて、マルコちゃんなの。
人を好きになるっていうのは、そういうことなのよ。さあ、追いかけましょう。
お母さんとパスタ出て行く
●シーン3(山の中)
エイト走って出て来る 動物達がいる
エイト:ああ、困ったなあ・・・。さっそく道に迷ってしまったよ。どうしよう。
・・・・あっ、よかったー。誰かいるぞ。
ニャンスケ:こんにちわ、人間さん、どうしたニャー?
イヌエモン:何か困っているんですかな?
エイト:こんにちは、動物さん。僕はエイト。実は、友達のマルコちゃんと山登りの勝負をしているところなんだ。
でも、道に迷ってしまって・・・。
ウサコ:この山は、道に迷いやすいのよ。いいわ、私達が道案内をしてあげる。
エイト:本当に? ありがとう!
ニャンスケ:気にすることはないニャー。おいらは、ニャンスケっていうんだニャー。
イヌエモン:わたしはニャンスケ様のお供をしている、イヌエモンと申します。
ウサコ:アタシはウサコ。それにしてもエイト、競争しているマルコちゃんってどんな子なの?
エイト:マルコちゃんは意地悪で、性格が悪くて、ひどい女の子なんだ。
でも、マルコちゃんは、頭が良くて、運動もできて、とっても可愛くて、学校でも人気の女の子なんだよ。
ニャンスケ:おいらは弱いものの味方だからニャー。エイトが勝てるように手伝ってやるニャー。
エイト:あっ、そうだ。勝負に負けたら、ひとつだけお願いを聞かなくちゃいけないんだよ!
イヌエモン:そういうことならわたし達に任せてくだされ。
わたし達がこのかぶりものを使って、マルコさんを足止めしてきましょう。
(イヌエモンがかぶりものを見せる)
ウサコ: エイトは今のうちに山を登っていて!この道をまっすぐ行けば近道よ。
イヌエモン:それじゃあ、行ってきますぞ。
動物達出て行く
エイト:あの3人に任せて大丈夫かなあ・・・
エイト出て行く
お母さんとパスタ出て来る
パスタ:エイトさんったら、野良猫たちと友達になったみたいですよ。
あんな汚い野良猫たちに助けてもらうなんて、どういうつもりでしょうか。
お母さん:こらパスタ。人を見かけで判断しては駄目よ。
それに、友達はたくさんいるほうが良いじゃないの。さあ、追いかけましょう。
パスタ:はーい。
お母さんとパスタ出て行く
●シーン4(山の中・マルコ)
マルコ歩いて出て来る
マルコ:この山は、迷路みたいですわね。気をつけないと、迷ってしまいそうですわ。
どこからか声が聞こえる
ニャンスケ:おやおや、人間がやって来たニャー。
マルコ:なっ、なんですの? 気のせいかしら、今、変な声がしましたけれど・・・。
イヌエモン:この山に勝手に入って来たのは、誰ですかなー?
マルコ:やっぱり誰かいますわね。そちらこそ、どなたですの?
人に名前を聞く時は、まず自分の名前から名乗るものですわよ?
ウサコ:ふふふふふ。覚悟はいいかしら?
マルコ: どなたか知りませんが、私に何かするつもりなら、フロントハイキックをお見舞いしてあげますわ。
ニャンスケ:できるものならやってみるニャー。
イヌエモン:びっくりして腰を抜かしても知りませんぞ?
ウサコ:せーの。
動物達:べろべろばあああああ。
お化けのかぶりものをかぶった動物達が飛び出すが、マルコは平然としている
ウサコ:あれれ、おっかしいわねぇ。もう一度よ。せーの。
動物達:べろべろばあああああ。
マルコ:うるさいお化けですわね。どこかに行きなさい!それーっ!(マルコがお化けを蹴る)
動物達:うわあああぁぁ。(吹き飛んで出て行く)
マルコ:私はお化けなんてこわくありませんの急がないと、エイト君に負けてしまいますわ。
マルコ走って出て行く
●シーン5(山の中・エイトと動物達)
エイト走って出て来る
エイト:あの3人、大丈夫かなあ?
ニャンスケ:おーい。(動物達が走って出て来る)
エイト:あっ、ニャンスケ、イヌエモン、ウサコ!どうだった?
ニャンスケ:それが、マルコちゃんは、全然怖がってくれなかったんだニャー。
エイト:マルコちゃんは、怖いもの知らずだからなあ。
ウサコ:そういえばエイト。マルコちゃんに勝ったら、ひとつだけお願いを聞いてもらえるんでしょう?
どんなお願いをするつもりなのか、アタシ達に教えてよ。
エイト:実は、僕マルコちゃんのことが好きなんだよ。
ウサコ:へえー。そうなのね!
イヌエモン:青春ですなあ。わたしも昔の胸のときめきを思い出しますぞ。
エイト:だから勝負に勝ったら、マルコちゃんにプロポーズして、僕と結婚してもらおうと思うんだ。
ウサコ:分かったわ、エイト。これは負けられない戦いよ。
さあ、ニャンスケ、イヌエモン!なんとしても、マルコちゃんを足止めするわよ!
ニャンスケ:なんで、ウサコが熱くなってるんだニャー?
ウサコ: さあ、二人とも行くわよ。
三匹走って出て行く
エイト:よーし、頂上に急ごう!
エイト走って出て行く
お母さんとドリア出て来る
ドリア:エイトさんったら、あの3人組に頼りっきりですね!まったく、情けないですねぇ。
お母さん:そうねえ、確かに頼りっきりというのは良くないけれど、
困っているときに助けてくれる仲間がいるって、大切なことだと思わない?さあ、追いかけるわよ。
お母さんとドリア出て行く
●シーン6(山の中・マルコ)
マルコ走って出てくる
マルコ:さあて、もうすぐ頂上ですわ。あらっ? 何か来るわ?
動物達が走って追いかけてくる
ニャンスケ:おーい、そこの女の子。ちょっと待つんだニャー。(出てきながら)
動物達がマルコの行く手をさえぎる位置に立つ。
ウサコ:ねえねえ、そんなに急いでどこにいくのかしら?そんなことよりアタシ達と一緒に遊びましょうよ。
マルコ:あなた達は、なんなんですの?誘っていただいたところ申し訳ありませんけれど、私には時間がありませんの。
イヌエモン:まぁまぁ、わたしとダンスでもして遊びましょう。
マルコ:ええーい、うるさい野良猫たちですわねぇ。あんまりしつこいようですと、本当に怒りますわよ!!
ニャンスケ:ひえええええ。
イヌエモン:おたすけえええ。
クマさん:うるさーい!!(場外から声がする)
ウサコ:な、なにかしら?
クマさんが出て来る
クマさん:お前達か! さっきからうるさいのは?せっかく気持ちよくお昼寝していたのに・・・。騒がしくて眠れやしない!
ウサコ:うわあああ、クマさんよ!食べられちゃうわ!(動物達がマルコの後ろに逃げる)
マルコ:あらあら、これがホントの森のクマさんですわね・・・。
ニャンスケ:ひええええ、イヌエモン、何とかするニャー!
イヌエモン:ええい、こうなったら仕方ありませんなあ。ほら、クマさんには使い切れないほどのお金をくれてやる。
これをあげるから、おとなしく帰ってくだされ。
クマさん:お金だと?そんなものはいらん!!俺をバカにするのもいい加減にしろ!
イヌエモン:そ、それならどうしたら、許してくれるのです?
クマさん:お前達は人に迷惑をかけておいて、謝ることもしないのか?
俺はただ一言、ごめんなさい、という言葉を聞きたいだけなんだ。
マルコ:私は何も、悪いことはしていませんわ!
ウサコ:そうだわ。マルコちゃん、お得意のフロントハイキックで、クマさんを追い払ってよ!
マルコ:仕方ありませんわね。それーっ。
マルコがフロントハイキックを仕掛けるが、クマさんには効いていない
クマさん:いきなり、暴力を振るうとは・・・。これだから、最近の若者はだめなんだ!
ゆっくり話し合おうじゃないか。
マルコ:あなたと話合っている時間はありませんわ!次は、バックハンドチョップをお見舞いしてあげますわ。それーっ。
クマさん:ほほう、なかなか鋭いバックハンドチョップだが、残念ながら私には効かないなあ。
マルコ:くっ、なかなかやりますわね。私のバックハンドチョップが効かないとは・・・。
クマさん:女の子を相手に、手荒なまねはしたくなかったが、
どうやら痛い目にあわないと、反省するつもりは無いみたいだな!
クマさんがマルコ達に近づいてくる
エイト:やめろーっ。(エイトが走って出て来て、クマと対峙する)
そこまでだ!
クマさん:なんだお前は。邪魔をするなら、お前も痛い目にあわせてやるぞ!
マルコ:ほら見なさい! エイト君に追いつかれてしまったじゃないですの!?
ウサコ:マルコちゃん、今はそんなことを言っている場合じゃないでしょう・・・?
エイトがクマのほうを向く
クマさん:お前も暴力を振るうつもりだろう。これだから最近の若者は・・・。
エイト:あの・・・、ごめんなさいっ。
クマさん:なん・・・だと?
エイト:お昼寝していたんでしょう?僕もお母さんによく、お昼寝の邪魔をされるから、気持ちは良く分かるよ。
どうか、みんなを許してあげて。
クマさん:はっはっは。そうそう、わたしはその言葉が聞きたかったんだ。悪いことをしたら、ごめんなさい。
こういう当たり前のことが出来ない人間が多いんだよ。
マルコ:なかなか話の分かる森のクマさんですわね。
クマさん:だから最初から話し合って解決しようと言っていただろう。君たちも反省しているようだし、今回は許してあげよう。
次からは気をつけなさい。それにしても、エイト君はしっかりしているじゃないか。わたしは嬉しいぞ!
マルコ:なかなか話の分かる森のクマさんですわね。
エイト君、あなたのことをちょっとだけ、見直しましたわよ。
エイト:へへっ、なんだか照れるなあ。
ニャンスケ:それーっ!
動物達がマルコの体にしがみつく
マルコ:うわっ、何をするんですの。離れなさい!
イヌエモン:エイトさん、チャンスですぞ。
ウサコ:はやく、今のうちに頂上へ!
エイト:みんなありがとう!
(エイト走って出て行く)
マルコ:ええーい、邪魔をするんじゃありませんわ!(動物達をなぎ払う)
動物達:うわあああ。(周辺に吹っ飛ぶ)
マルコ:待ちなさーい! (マルコも走って出て行く)
クマさん:ほんとうににぎやかな子ども達だなあ。
お母さんとパスタが出て来る
クマさん:おや、あなた達は?
お母さん:私はエイトの母親です。
クマさん:おお、そうでしたか。お母さん、良い息子さんを持ちましたね。
あんなに礼儀正しい子どもはなかなかいませんよ。
パスタ:エイトさん、素直にごめんなさいと言っていましたからね。ちょっと見直しましたよ。
お母さん:ふふふ。2人にそう言ってもらえるとうれしいわ。
パスタ:さあ、お母様、急ぎましょう。
(お母さんとパスタ出て行く)
お母さん:それでは、クマさん、さようなら。
クマさん:さようならー。
●シーン7(山の頂上)
エイト走って出て来る
エイト:ハアハア。あんなところに、赤い花が咲いているぞ。ということは、ここが頂上だ!
(赤い花に近づいて、手にする)
やったー、マルコちゃんとの勝負に勝ったー。
マルコ走って出てくる
マルコ:エイト君に負けるなんて。私としたことが、なんという不覚・・・。きーーーっ、悔しいったらありませんわ!
動物達も出て来る
ウサコ:さあ、エイト、あなたのお願いをマルコちゃんに聞いてもらうのよ!
エイト:うん!マルコちゃん、僕のお願い聞いてくれる?
マルコ:負けたほうがお願いを聞く。そういう約束ですものね。それで、どんなお願いですの?
エイト:実は僕、その・・・。あの・・・。
マルコ:なんなんですの。私、はっきりしない男の子は嫌いなんですの。
エイト:実は僕、昔からずーっと、マルコちゃんのことが好きだったんだ。だから、僕と結婚して欲しいんだ!(赤い花を渡す)
間
マルコ:私と結婚して欲しいですって?・・・、でも、私達はまだ小学生ですから、結婚することはできないんですのよ??
エイト:ええー、そうだったのー!?お前達、なんで教えてくれなかったんだよ!
ニャンスケ:はっはっは。人間の世界のことは詳しく知らないのニャー。さて、そろそろ帰るニャー。
エイト:えええー、そりゃないよー。
イヌエモン: でもエイトさん、今日はいろいろ勉強になりましたぞ。 悪いことをしたら謝る、大事なことですな。
ウサコ:エイト、今日はクマさんを説得してくれてありがとう。おかげで命拾いしたわ。それじゃ、私達は行くわね。
動物達はそそくさと帰っていく
マルコ: エイト君、大人になってから、もう一度山登りの勝負をしましょう。
今日は、とんだ邪魔が入ってしまいましたけれど、次は二人っきりで真剣勝負ですわよ。
エイト: それはどういう意味だい?
マルコ:ふふ、ほんとうに鈍い人ですわね。それでは、ごきげんよう。
マルコ出て行く
エイト:うん、さようならー。あーあ、小学生は結婚できないのかあ・・・。
お母さんとパスタが出て来る
お母さん:エイト。今日は残念だったわね。
エイト:あっ、お母さん、それにパスタ。もしかして、付いて来ていたのかい?
パスタ:はい。ぼくたち、今日のことはずっと見ていたんですよ。
エイトさん、今回のプロポーズは失敗でしたけど、いい友達ができましたね。うらやましいです。
エイト:うん、なんだか今日はとてもすがすがしい気持ちだよ。
お母さん:ねっ、お母さんの言うとおりだったでしょう?
家でお昼寝しているのも良いけれど、ひとつのことを夢中で頑張ることは、もっと楽しかったでしょう?
エイト:うん。お母さんの言っていた、今しか出来ないことをしなさいって、こういうことだったんだね。
パスタ:エイトさんは、大人になってから、もう一度、マルコさんと山登りの勝負をするんですよね?
今度は自分ひとりだけで、マルコさんに勝てるように、
今のうちから、いろいろなことにチャレンジしておかないと駄目ですよ。
エイト:うん、分かったよ。 毎日お昼寝ばかりしていないで、いろんなことをやってみるよ。
お母さん:エイトったら、なんだか知らないうちにたくましくなったわね。エイトのことがとっても頼もしく見えるわ。
パスタ:さあ、そろそろ帰りましょう。
エイト:うん!
出て行く
おしまい